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インスタントをやめて、ちゃんと味噌汁を作り始めたら、味噌が気になりだした
恥ずかしい話をする。
50歳を過ぎるまで、私はほぼインスタントの味噌汁しか飲んでいなかった。
お湯を注いで30秒。便利だし、味も悪くない。妻が体調を崩して料理ができなかった時期に覚えた習慣が、そのままずっと続いていた。
「せっかくだし、ちゃんと作ってみるか」
発酵食品に興味を持ち始めたついでに、「味噌汁くらいはちゃんと作ろう」と思った。
最初は難しく考えていたが、やってみると意外にシンプルだった。昆布と鰹節でだしをとって、味噌を溶かす。それだけだ。
最初に作った味噌汁を一口飲んで、正直、「全然違う」と思った。出汁の香りと、味噌の深みが全然違う。インスタントが悪いわけではないが、こんなに違うものだとは思っていなかった。
味噌の棚の前で、15分立ち尽くした
それから、スーパーの味噌売り場がなんとなく気になるようになった。
ある日、仕事帰りに立ち寄ったスーパーで、味噌の棚の前に立った。
並んでいる味噌の種類の多さに驚いた。信州味噌、仙台味噌、麦味噌、八丁味噌、白味噌、合わせ味噌。値段も200円台から1,000円超えまで様々だ。パッケージには「国産大豆使用」「天然醸造」「無添加」などの文字が踊っている。
「天然醸造」って何だろう。
調べてみると、「天然醸造」とは、温度管理などで醸造を急がせず、自然の環境の中で時間をかけて発酵・熟成させた味噌のことらしい。対して、大豆や麹を加熱処理して短期間で作ったものは「速醸」と呼ばれる。
天然醸造の味噌は、1年以上かけて作られるものもある。
「1年」という時間がかかることへの、不思議な感動
1年。食べ物が1年かけて変わっていく。
菌が大豆と塩と麹を、ゆっくりゆっくり分解して、旨味を作っていく。その間、何も急かさない。ただ待つ。
なんだかすごく豊かな話だと思った。
効率や速さを追い求める現代の食品製造とは、真逆の発想だ。
スーパーで試した4種類の味噌
天然醸造の味噌に興味が出てから、スーパーで4種類の味噌を買い、飲み比べてみた。
信州味噌、仙台味噌、合わせ味噌、そして天然醸造と書かれた味噌。同じ出汁で、同じ量の味噌を使って、4杯の味噌汁を作った。
飲んでみると、全部違う。信州味噌は塩辛さの中にさっぱりした風味がある。仙台味噌は色が濃く、コクがある。天然醸造のものは、香りが一番複雑だった。「旨味」という言葉の意味を、初めて体感した気がした。
発酵の期間と、出来上がるものの風味は、確かに関係している。時間をかけたものには、時間をかけたものにしかない深みがある。そう感じた。
福井県の創業1914年のお味噌屋さんから、木樽が届いた
スーパーで天然醸造の味噌を試したり、いろいろと調べているうちに、頭にある考えが浮かんだ。
「自分で作れないだろうか」
調べると、福井県に昔ながらの製法でお味噌を作り続けているお店があった。そこでは木樽や大豆、塩麹のセットを販売していて、自家製味噌の仕込みができるという。
思い切って注文した。2024年の2月のことだ。
届いた木樽を前に、「本当にやるのか、自分」と少し笑えた。大豆を煮て、塩麹と混ぜて、木樽に仕込む。丁寧に空気を抜いて、重石をして、あとはひたすら待つだけ。
大豆を煮る半日間
仕込みの当日は、半日かけた。
大豆を前の晩から水に浸けておく。翌朝から煮始める。大豆が柔らかくなるまで、3〜4時間かかった。
ふっくらした大豆を手で潰しながら、「これが味噌になる」と思った。素材としての大豆と、発酵後の味噌が、頭の中でつながった瞬間だった。
煮た大豆に、麹と塩を混ぜる。よく混ぜて、木樽に詰める。表面を平らにして、重石をする。あとは時間に任せるだけ。半日の作業が終わった。「待つ」という作業が、これから10ヶ月続く。
自分で仕込んだ味噌で飲む味噌汁
仕込んでから約1年。木樽を開けたときの香りは、これまで嗅いだどの味噌とも違った。
大豆の甘みと、深い発酵の香り。自分で作ったという贔屓目もあるだろうが、本当においしかった。
今は、その木樽の自家製味噌で毎朝お味噌汁を作っている。インスタントから始まって、スーパーの天然醸造味噌を経て、自分で仕込んだ味噌にたどり着くまで、ずいぶん遠くへ来たものだと思う。
「発酵って、時間が旨味を作るんだな」と、今は心から実感している。
インスタントから手作りへ。変わったのは食事だけではなかった
インスタント味噌汁を飲んでいた頃と、今の自分とでは、食事への向き合い方がまったく違う。
以前は「食事は素早く済ませるもの」という感覚があった。時間をかけることが、なんとなくもったいない気がしていた。
今は違う。だしをとる時間、味噌を溶かす時間、食べる時間。それぞれが大切な時間だと思うようになった。
発酵食品と関わるようになってから、「時間をかけること」の価値を改めて知った気がする。急かしても、良いものはできない。それはジョギングも同じだし、体重の変化も同じだ。
スーパーで買った天然醸造の味噌を試した
福井の木樽を注文する前に、スーパーで天然醸造の味噌を試してみた。
信州系の天然醸造味噌を買って、だしから引いた味噌汁を作った。一口飲んで、「あ、これが本物の味噌汁か」と思った。複雑な旨みがある。インスタントとも、スーパーの普通の味噌とも違う。「天然醸造」の文字が、伊達ではないことを知った。
その体験が、「自分でも作れるかもしれない」という気持ちに火をつけた。天然醸造の味噌がこんなにおいしいなら、自分で仕込んだ味噌はどんな味になるのか。好奇心が、次の行動を引き寄せた。
発酵と時間という考え方
「天然醸造の味噌は1年以上かけて作られる」と知ったとき、何かが腑に落ちた気がした。
1年という時間を使って食べ物を作る。急がない。急げない。そういうものだ。
現代の食品は、効率と速さが優先される。添加物で味を調整する。加熱処理で短期間に仕上げる。そちらの方が大量生産に向いているから、今のスーパーに並んでいるものの多くはそうして作られる。
でも天然醸造の味噌は、そのやり方を選ばない。時間をかけることを選ぶ。菌の力を信じて、待つことを選ぶ。
その哲学が、私には響いた。速さや効率だけが価値ではない。待つことにも、意味がある。その感覚は、ジョギングを続けてきた経験とも重なる。
毎朝の味噌汁が、一日の始まりになった
今は毎朝、味噌汁を作っている。
朝食は食べないため、正確には「昼食の準備と一緒に作る」ことが多いが、一日に必ず一杯は飲む。
インスタントから始まって、手作りに変わって、自家製味噌になるまでに、1〜2年かかった。でも今は、この一杯が当たり前の習慣になっている。
「今日は面倒だからインスタントでいいか」と思うことがある。でも実際に飲み比べると、やっぱり違う。一度自分で作った味噌汁の味を知ってしまうと、戻れない。
自分で作るということは、手間をかけるということだ。でもその手間が、食事をより大切にする気持ちにつながっている気がする。
味噌の種類と使い分け
自家製味噌だけでなく、スーパーの味噌も使うことがある。
自家製は大豆の風味が強く、しっかりした味わいがある。毎日の朝食にはやや個性が強いこともある。そういう時は、スーパーで買った信州系の淡い味噌を合わせて使う。
合わせ味噌という方法だ。濃い味噌と薄い味噌を組み合わせることで、バランスのとれた一杯になる。料理でいえば、出汁を組み合わせるのに似ている。
発酵食品の奥深さは、組み合わせにもある。一つの素材だけでなく、組み合わせることで新しい味が生まれる。これはぬか漬けでも感じることだ。
次回:発酵食品を続けて3ヶ月。体に変化はあったのか、正直に報告します。
※ この記事は個人の体験と公開情報に基づくものです。特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。健康上の不安がある方は、医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。