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特殊条件の試作味噌から「ペルロリン」を単離|トリプトファン添加・50℃・8週間の食品化学研究
この記事について この記事は、味噌の発酵中にできる化合物を調べた食品化学の研究を紹介するものです。研究で使われた味噌は、材料や発酵条件が一般の味噌と大きく異なる試作品です。特定の食品や成分について、病気の予防・治療・健康の改善を示すものではありません。また、医療上の助言でもありません。体調や持病、服薬について気になることがある場合は、医師・薬剤師などの専門家にご相談ください。本記事の画像はAI生成のイメージであり、研究で使用された味噌や試料、特定の商品を撮影したものではありません。
味噌の中では、何か月もの発酵のあいだに、たくさんの化学反応が進んでいます。うま味のアミノ酸、香りの成分、茶色い色のもと。その全体像は、いまも完全にはわかっていません。
2026年、食品科学の査読付き学術誌『Journal of Food Science』に、味噌の中から「ペルロリン(perlolyrine)」という化合物を取り出し、その構造を確かめたという研究が掲載されました。著者らは、味噌からペルロリンを単離・同定した初の報告だとしています。
ただし、この研究を読むうえで、最初に押さえておきたい大事な前提があります。研究で使われた味噌は、スーパーで売られている味噌や、家庭で仕込む味噌とは、材料も条件も大きく違う試作品だったという点です。この記事では、何が見つかったのかと同時に、どんな条件での話なのかを丁寧に整理します。
そもそも、ペルロリンとはどんな物質か
ペルロリンは、「β-カルボリン」と呼ばれる化合物のグループに属する物質です。β-カルボリンは、アミノ酸の一種であるトリプトファン(またはその仲間)と、糖などから生じる成分が反応してできる構造を持っています。植物や、加熱・発酵した食品の中に、自然に存在することが知られています。ただし、食品の中に自然に存在することは、その成分が安全であることや、健康によい作用があることを意味するものではありません。
論文の序文によると、ペルロリンはこれまでにも、醤油、ビール、バルサミコ酢などで報告されてきました。日本酒や醤油から、ペルロリンと、よく似た構造の「フラジン(flazin)」の両方が検出されたという古い報告もあります。
味噌については、フラジンが存在することが2024年の研究で報告されていました。ペルロリンとフラジンは、構造の違いがカルボキシ基(-COOH)という部分ひとつだけです。そのため、著者らは「味噌にはペルロリンも存在するはずだ」と考え、それを確かめることを目指しました。
どんな味噌を、どう発酵させたのか
この研究は、台湾の国立嘉義大学(食品科学系・応用化学系)と吳鳳科技大學の研究グループによるものです。
味噌の仕込み方は、次のとおりでした。
- 基本の材料:米麹600 g、大豆粉600 g、10%エタノール(アルコール水溶液)1,200 mL、食塩72 gを混ぜる
- 大豆は、嘉義大学で育成されたイソフラボンの多い品種を粉にしたもの
- 著者らは、以前に報告した低塩の仕込み方を改変したものと説明しています
- 混ぜた材料を180 gずつに分け、それぞれに**砂糖9 g(5%)**を加えたうえで、次の3通りにした
- トリプトファンを3.6 g(2%)加える
- トリプタミンを3.6 g(2%)加える
- トリプトファンまたはトリプタミンの代わりに、大豆粉3.6 gを加えた対照
- 60 gずつガラス瓶に入れ、瓶の中の空気を窒素に置き換えて密閉
- 50℃で8週間発酵させた
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつです。トリプタミンは、トリプトファンから生成しうる生体アミンの一種です。本研究で実験的に用いられたもので、家庭で食品に加える材料として紹介するものではありません。どちらも、ペルロリンやフラジンの骨格の材料になりうる物質として選ばれました。
ここで改めて、一般的な味噌との違いを確認しておきます。論文自身が序文で、従来の味噌づくりは麹をつくったあと、蒸した大豆と塩を混ぜて「数か月」発酵させる、と説明しています。一方、この研究の味噌は、
- 蒸した丸大豆ではなく大豆粉を使っている
- エタノールと砂糖を加えた低塩の配合である
- トリプトファンやトリプタミンを2%加えている
- **50℃**という高い温度で、8週間発酵させている
という点で、ふつうの味噌とは大きく異なります。著者ら自身も結論の中で、トリプトファンやトリプタミンを味噌づくりに加えることは「一般的な方法ではない」と述べています。
何が見つかったのか
試作味噌から、ペルロリンを取り出して構造を確認
著者らは、トリプトファンを加えて8週間発酵させた味噌を抽出し、クロマトグラフィー(成分を分ける分析手法)で目的の成分を分離しました。そして、NMR(核磁気共鳴)などの手法で構造を調べ、それがペルロリンであることを確かめています。
さらに、味噌の抽出液に、取り出したペルロリンを加えて分析し、同じ位置にピークが重なることも確認しました。
加えたものによって、できる量が違った
分析の結果、論文の本文では次のように報告されています。
- ペルロリンは、トリプトファンを加えた味噌とトリプタミンを加えた味噌の両方で検出された
- トリプトファン/トリプタミンを加えていない対照の味噌では、ペルロリンは「わずか」しか検出されなかった(具体的な数値は示されていない)
- フラジンは、トリプトファンを加えた味噌で多く検出された一方、トリプタミンを加えた味噌ではほとんど検出されなかった
具体的な量として本文に示されているのは、トリプトファンを2%加えて50℃で8週間発酵させた味噌での値です。この味噌1 gあたり、ペルロリンが0.83 mg、フラジンが3.9 mgと見積もられました。
注意したい点が2つあります。
1つめは、論文の要旨(抄録)と本文で、書き方が食い違っていることです。要旨では「ペルロリン約0.83 mg/gが、トリプトファン・トリプタミンの両方の味噌で生成した」と読める書き方になっています。しかし本文では、0.83 mg/gはトリプトファンを加えた味噌の値として示されていて、トリプタミンを加えた味噌ではペルロリンの量は「より少なかった」と書かれています。
2つめは、この数値は、成分を加えた特別な味噌での値だということです。トリプトファン/トリプタミンを加えていない対照の味噌でどれだけできていたのかは、数値で示されていません。つまり、この研究から「一般の味噌にペルロリンがどのくらい含まれているか」を知ることはできません。
トリプタミン添加条件では、イソフラボン配糖体の加水分解が抑えられた
この研究には、もうひとつ、著者らが「偶然気づいた」と書いている発見があります。大豆に含まれるイソフラボンの変化についてです。
大豆のイソフラボンは、多くが糖と結びついた形(ダイジン、ゲニスチンなど)で存在しています。味噌の発酵中には、麹由来のβ-グルコシダーゼという酵素などによって糖が外れ、ダイゼイン、ゲニステインといった形に変わっていくことが知られています。
今回の研究では、次のことが報告されました。
- トリプトファン/トリプタミンを加えていない対照の味噌では、イソフラボンの糖がほぼ完全に外れていた
- トリプタミンを2%加えた味噌では、この変化がほぼ完全に抑えられていた
- トリプタミンを0%、0.5%、1%、2%と変えて50℃で1週間発酵させると、加える量が多いほど変化が抑えられた
- 味噌ではなく、取り出した大豆イソフラボンに、米麹の抽出液やアーモンド由来のβ-グルコシダーゼを作用させた試験でも、トリプタミンがあると糖が外れにくかった。アーモンドの酵素では、トリプタミン(10 mM)がある条件で96時間置いても、大きくは変化しなかった
- 酵素の働きを測る試薬(pNPG)を使ったモデル実験では、トリプトファンがあっても反応は進んだが、トリプタミンがあると量に応じて反応が抑えられた
著者らは、この違いの理由として、トリプタミンとトリプトファンの「電気的な性質」の違いを挙げています。トリプタミンは中性付近の条件でプラスの電荷を帯びやすく、それが酵素の働きを妨げる方向に作用するのではないか、という考えです。反応速度の解析からは、酵素の働きを複合的に妨げる「混合型」の阻害にあたる可能性が示されました。
ただし著者ら自身が、作用のしくみや分子レベルでの詳しい機構については、今後さらに研究が必要だと述べています。
なお、この記事では、イソフラボンの形が変わることが体にとってどういう意味を持つか、という点には立ち入りません。この研究はその点を調べたものではないからです。
「生理活性」という言葉を、どう受け止めるか
論文の要旨や序文では、ペルロリンやフラジンが「生理活性をもつ(bioactive)」天然のアルカロイドだと紹介されています。著者らは、過去の実験室レベルの研究を引用して、この成分の作用や、食品由来の機能性素材としての可能性に言及しています。
しかし、ここは慎重に区別する必要があります。
- この研究では、ヒト・動物・培養細胞のいずれを使った試験も行われていません
- 味や香りの評価(官能評価)も行われていません
- トリプタミンやβ-カルボリンを加えたときの安全性についての検討も、論文には見当たりません
つまり、この研究が示したのは「試作味噌の中で、ある化合物ができ、その量が加えた材料によって変わった」という食品化学上の事実までです。**味噌を食べることで何らかの健康上の作用が得られる、という話ではありません。**この記事でも、成分の作用の中身については扱いません。
研究の限界として押さえておきたいこと
論文には独立した「限界」の節はありません。そのため、ここでは論文の記載から読み取れる点を、この記事の立場で整理します。
- 一般的な味噌ではない:大豆粉・エタノール・砂糖を使った低塩の配合に、トリプトファンやトリプタミンを2%加え、50℃で8週間発酵させた試作品です
- 対照の味噌での量が示されていない:トリプトファン/トリプタミンを加えていない対照の味噌でのペルロリンは「わずか」とされるだけで、数値がありません
- 数値は1つの条件だけ:本文で示された0.83 mg/g・3.9 mg/gは、トリプトファンを加えた味噌での値です。ばらつき(標準偏差など)も示されていません
- 要旨と本文に食い違いがある:前述のとおり、トリプタミンを加えた味噌での量の書き方が一致していません
- 定量の基準にした物質の純度は約90%:著者らは実用上の目安としての定量だと説明しています
- 細かな記載のばらつき:発酵期間を8週間としつつ、試料の採取時点に10週目も挙げられているなど、条件の記述にわずかな不一致があります
- 味・安全性・健康への作用は調べていない
こうした点から、この研究は「味噌の化学を探る基礎的な一歩」と受け止めるのが妥当だと考えられます。
資金提供と利益相反について
論文によると、この研究は**台湾の国家科学及技術委員会(National Science and Technology Council)**の支援を受けて行われました。また、著者らは「利益相反はない」と申告しています。
家庭の味噌づくりに持ち込まないでほしいこと
ここは、はっきり書いておきます。
この研究をまねて、家庭の味噌にトリプトファンのサプリメントやトリプタミンを加えたり、50℃で発酵させたりしないでください。
- 研究の味噌は、研究室の管理された条件で、分析のためにつくられた試作品です
- 味・安全性・健康への影響は調べられていません
- 著者ら自身が、こうした成分を加えることは一般的な方法ではないとしています
家庭で味噌を仕込む場合は、信頼できる作り方に従い、清潔な道具と容器を使い、温度や塩分の目安を守ることが基本です。見慣れない色のカビや異臭などの異常があれば、食べないでください。ただし、**外観やにおいだけで安全性を判断できるとは限りません。**判断に迷う場合は食べないようにしてください。
塩分について
味噌は塩分を含む調味料です。この研究は低塩の配合を使っていますが、一般に市販や家庭の味噌には、一定の塩分が含まれます。
厚生労働省は日本人の食事摂取基準(2025年版)で食塩の摂取目標量を示しており、国民健康・栄養調査では、日本人の平均摂取量はその目標を上回っているとされています。味噌汁の量や回数、ほかの食事との組み合わせを意識しながら楽しむことが大切です。持病や食事制限がある場合は、必ず医師や管理栄養士の指示に従ってください。
味噌の中の化学を、少しだけのぞく
この研究から読み取れることは、限られています。見つかった化合物は、成分を加えた特別な試作味噌でのもので、一般の味噌にどれだけ含まれているかはわかりません。体への作用も、味への影響も調べられていません。
それでも、興味深い点はあります。
ひとつは、味噌の中でできる成分が、材料や条件によって大きく変わりうるということです。トリプトファンを加えるか、トリプタミンを加えるかという、わずかな違いで、できる化合物の種類も、イソフラボンの変化の進み方も変わりました。発酵が、菌だけでなく、材料どうしの化学反応にも左右されていることがうかがえます。
もうひとつは、何百年も食べられてきた味噌にも、まだ調べ尽くされていない成分があるということです。醤油やお酒で見つかっていた成分が、味噌でも確かめられた。こうした地道な分析の積み重ねが、発酵食品の理解を少しずつ広げています。
台所での受け止め方としては、次のくらいが妥当でしょう。
- 研究で見つかった成分を目的に、味噌の食べ方や量を変える理由にはなりません
- 研究の条件をまねて、家庭で材料を加えたり温度を上げたりしないでください
- 味噌は塩分を含む調味料として、量を意識しながら、いつもの食事の中で味わうものです
毎日の味噌汁の中にも、まだ名前のついていない変化が起きているのかもしれません。そう思うと、いつもの一杯も、少し違って見えてくるかもしれません。
Toshiより
味噌から「ペルロリン」という聞き慣れない化合物が見つかった。最初にこの研究を知ったとき、私は素直に面白いと思いました。味噌は、毎日のように食卓に並ぶ、とても身近な食品です。味噌汁として飲み、野菜につけ、料理の味つけにも使う。昔から知っているつもりの食品なのに、現代の分析技術で詳しく調べると、まだ十分に知られていない成分が出てくる。何百年も受け継がれてきた発酵食品の中に、科学がこれから名前をつけ、役割を確かめていく世界が残っていることに、発酵の奥深さを感じます。
一方で、今回の記事で最も大切だと思ったのは、「味噌から新しい成分が見つかった」という部分だけではありません。研究に使われた味噌が、私たちが普段食べている味噌とは大きく違っていたことです。大豆粉と米麹にエタノールや砂糖を加え、さらにトリプトファンやトリプタミンを加えて、50℃で8週間発酵させている。これは一般的な味噌づくりではなく、化学反応を詳しく調べるためにつくられた研究用の試作品です。
研究結果を読むとき、つい結論だけに目を向けてしまいます。「味噌から珍しい成分が見つかった」「生理活性を持つ物質らしい」と聞けば、その成分が普通の味噌にもたくさん含まれ、体に良い働きをしてくれるように感じるかもしれません。しかし、今回の研究からそこまでは言えません。一般的な味噌にペルロリンがどれほど含まれているのかも、人が食べたときに何が起きるのかも、味や安全性がどう変わるのかも調べられていないからです。
この「どこまで分かっていて、どこから先は分からないのか」を区別することは、とても大切だと思います。科学の記事では、珍しい名前や大きな数字が目に入りやすいものです。しかし、本当に読むべきなのは、その数字がどんな材料、温度、期間、測定方法から出てきたのかという部分です。条件が違えば、結果も変わります。研究室の試作品で得られた数字を、市販の味噌や家庭の味噌にそのまま当てはめることはできません。
今回の論文には、要旨と本文で数値の説明が一致しにくい部分や、対照条件のペルロリン量が具体的に示されていない点もあります。定量に使った物質の純度や、発酵期間の記載にも注意が必要です。こうした点まで記事で伝えることには意味があると思います。研究論文は、完成した答えだけがきれいに並んでいるものではありません。測定の限界があり、記載の揺れがあり、次の研究で確かめなければならない部分も残ります。それを隠さず紹介することが、科学に対する誠実な向き合い方ではないでしょうか。
そして私は、この研究を家庭で再現しようとは思いません。トリプトファンのサプリメントやトリプタミンを味噌に加え、温度を上げれば、より「機能的な味噌」ができるという話ではないからです。研究では味や安全性を確かめていません。発酵は微生物と材料、温度、塩分、時間が複雑に関わる営みです。条件を変えれば、狙った成分だけでなく、望ましくない変化が起きる可能性もあります。家庭では、実績のある作り方に従い、衛生と適切な塩分、温度を守ることが何より大切です。
私がこの研究から受け取ったのは、健康効果ではなく、発酵を見る新しい視点です。発酵というと、麹菌や乳酸菌、酵母など「菌の働き」に注目しがちです。しかし、菌がつくった酵素、原料に含まれるアミノ酸や糖、その後に起きる化学反応まで含めて、最終的な味噌ができあがります。発酵は、生き物の働きだけでも、単純な化学反応だけでもありません。その両方が重なり、時間とともに変化し続ける現象なのだと、あらためて感じました。
トリプトファンとトリプタミンは、名前も構造も近い物質です。それでも、試作味噌の中では、ペルロリンやフラジンのでき方、イソフラボンの変化に違いが現れました。材料のわずかな違いが、発酵後の成分を大きく変える。この繊細さを知ると、味噌蔵ごとに味や香りが違うことにも、さまざまな条件の積み重ねがあるのだろうと想像できます。原料、蔵の微生物、季節、温度、熟成期間。職人が長い経験の中で見きわめてきたことを、科学が少しずつ分子の言葉で説明し始めているように思います。
私は発酵の記事を書いていると、伝統と科学はどちらが上なのか、と考えることがあります。けれど、今回の研究を見ても、その二つを競わせる必要はないのでしょう。昔の人はペルロリンという名前を知らなくても、原料を選び、塩を加え、季節を読みながら、おいしい味噌をつくってきました。科学はその経験を否定するものではなく、目に見えなかった変化を測り、言葉にし、再び確かめられる形にしてくれます。職人の感覚と研究者の分析は、違う道具で同じ発酵を見つめているのだと思います。
また、知らない成分が見つかったとき、すぐに「体に良いのか、悪いのか」と二つに分けたくなる気持ちもあります。しかし、成分が存在すること、その量を測れること、人の健康に意味があることは、それぞれ別の段階です。存在が確認されたばかりの段階で効能を語らないことは、研究を軽く扱わないためにも大切です。分からないものを分からないまま置いておく。その慎重さも、科学を楽しむ態度の一つだと思います。
だからといって、私は味噌に特別な効能を求めすぎる必要はないと思っています。味噌には味噌のおいしさがあり、地域ごとの文化があり、食卓を落ち着かせてくれる香りがあります。それだけでも十分に価値があります。珍しい成分が見つかったから味噌の量を増やす、健康に良さそうだから毎食たくさん食べる、ということではありません。味噌は塩分を含む調味料ですから、量を意識し、具材やほかの料理とのバランスを考えながら楽しむのが自然です。
健康についても、一つの食品だけに答えを求めないようにしたいと思います。私は発酵食品を楽しみながら、ジョギングも続けています。体を動かし、きちんと休み、いろいろなものを食べる。その中に味噌汁や納豆、漬物がある。特別な成分を追いかけるより、無理なく続けられる生活を積み重ねるほうが、私には合っています。研究の記事を読むときも、「これを食べれば健康になる」と急いで結論を出すのではなく、自分の暮らしを見直す小さなきっかけとして受け止めたいです。
今回見つかったペルロリンが、味噌の中でどのようにできるのか。一般的な味噌にも含まれるのか。味や色にどの程度関わるのか。安全性を含め、人が食べることにどんな意味があるのか。これから確かめるべきことは、まだたくさんあります。だからこそ面白いのだと思います。一つの研究で結論を急がず、次の研究、その次の研究へと知識が積み重なる過程を見ていきたいです。
いつもの味噌汁は、明日も同じように食卓に並びます。けれど、その一杯の中では、麹菌の酵素が働き、アミノ酸や糖が変化し、まだ知られていない成分が生まれているのかもしれません。効能を期待して飲むのではなく、長い発酵の時間と、それを解き明かそうとする研究者の地道な仕事に少し思いを向けながら味わう。そうすると、普段の味噌汁が、昨日より少しだけ奥行きのあるものに感じられます。
身近なものほど、知っているつもりになりやすい。味噌には、まだ分からないことがある。その事実を楽しみながら、分かったことと分からないことを混ぜずに伝えていく。それが、このブログで発酵を取り上げ続ける私の役割だと思っています。
出典 Chen HS, Chiu PC, Tsai YC, Li YJ, Yen MY, Zhan YJ, Chiou RY. “Perlolyrine Formation and Isoflavones Hydrolysis During Miso Fermentation Affected by Tryptophan and Tryptamine.” Journal of Food Science, 2026; 91(9): e71364. https://doi.org/10.1111/1750-3841.71364
※ この記事は査読付き学術誌に掲載された研究をもとに、内容を一般向けに整理したものです。研究の解釈には限界があり、今後の検証によって理解が変わる可能性があります。
※ この記事は個人の体験と公開情報に基づくものです。特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。健康上の不安がある方は、医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。