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アマタ・チョンブリ、二日目。肉を焼き、若者と向き合った一日。


朝6時に目が覚めた。

カーテンの隙間から、白い光が入ってくる。昨日の疲れはある。でも体は動く。「せっかくだから外を歩こう」と思い、スニーカーを履いた。

28度の朝を、一人で歩いた

ホテルの裏側に出ると、広い道路が続いていた。

出勤ラッシュにはまだ早い。車もバイクも、のんびりしたものだ。ただ、緑がある。木々が並んでいて、空気がじっとりと重い。日本の夏の朝とは違う。湿度の種類が違う。体に張り付くような空気だ。気温はすでに28度。曇りで太陽は出ていないが、蒸し暑さに変わりはない。

歩き始めてすぐ、鳥の声が聞こえてきた。

日本では聞かないような鳴き声だ。高くて透き通った声のものもあれば、低くのびやかに鳴くものもある。「これは何という鳥なんだろう」とふと思ったが、わからない。わからないまま、その声を聞きながら歩いた。それでよかった。

隣接するゴルフ場から、機械の音が聞こえてきた。早朝から整備の方が動いている。コースを整える人たちの仕事は、こんな朝早くから始まっているのか。そういう当たり前のことに、異国の地で気づく。

道が私道かどうか、少し不安だった。

広い道路ではあるが、どこに続いているかわからない。ふとマップを開いた。ホテルからずいぶん離れていた。それがわかると、自然と足が引き返していた。

30分歩いたところで、汗が出てきた。

運動の汗というより、ただ存在しているだけで滲む汗だ。これが熱帯の朝というものだ。歩きながら、ふと思った。「明日の朝は、ジョギングにしてみようか」。走ることは40代から習慣にしてきた。環境が変わっても、できる限り体を動かしたい。走れる路面かどうかはわからないが、試してみる価値はある。

ホテルに戻り、シャワーを浴びた。仕事を含めて、今日が本格的に始まる。

ホテルの朝食。バイキング形式を観察した

朝食はバイキング形式だった。

席に着くと、アテンダントがすぐに声をかけてきた。「いらっしゃいませ、何名様ですか」という流れで、席まで案内してくれる。この対応は素晴らしい。お客様を迎える基本がきちんとできている。

ただ、細かいところに気になる点がいくつかあった。

テーブルや配膳台の上に、水滴がこぼれていた。ソースが垂れたままになっているところもあった。気づいた時にすぐ拭く、という動きがあるといい。リセット(片付けと補充)のスピードは速い。それだけに、細部の衛生管理が整えばもっと印象が変わる。

料理の配置にも、統一感がなかった。

ご飯がある場所、味噌汁がある場所、薬味がある場所がバラバラで、お客さんが迷う。本来は「ご飯を取って、味噌汁を添えて、薬味を選ぶ」という流れが、一つの動線として繋がっているといい。食べる人がスムーズに動けるような配置にするだけで、満足感が変わる。

卵料理も同じだ。

スクランブルエッグ、目玉焼き、ゆで卵。それぞれが離れた場所に置かれていた。卵は卵でまとめる。それだけで「ここに行けばわかる」という安心感が生まれる。バリエーションについては、もう少し加えてもいいかもしれない。デイリースペシャルのコーナーがあったり、地元の食材が一品入ってきたりすると、食事がより楽しくなる。

批判ではない。観察だ。

私の仕事はサービスの質を上げることだ。だからこそ、こういう細部が気になる。良いところはしっかりある。改善できるところも、きちんと見える。それをどう伝えるかが、今回の出張の意味の一つだ。

午前の仕事。3カ国のサーロインを食べ比べた

今日の午前の仕事は、テイスティングだ。アメリカ産、ニュージーランド産、オーストラリア産、3カ国のサーロインを食べ比べる。

それぞれを焼いて、並べた。

参加者の反応が面白かった。「え、こんなに違うんですか」という声が上がる。見た目は似ているが、味も、食感も、香りも、それぞれ異なる。脂の甘さが違う。赤身のしっかりした味わいが違う。噛んだときの弾力が違う。肉は産地によってこれほど個性が出る。

質問も出た。

「なぜこんなに違うのか」「飼料は何が違うのか」「調理の温度はどこが適切か」。あれこれ聞いてくる。答えながら、「この人たちは本気だ」と感じた。なんとなくこなすのではなく、理解しようとしている。それが質問の中ににじんでいた。

テイスティングの後、一つ課題を出した。

「肉を焼いたときに出るエキス、この旨み成分をどう活かすか」。エキスとは、肉から出てくる赤い液体のことだ。旨みが凝縮されている。捨てるのはもったいない。私の提案は、マッシュポテトだ。エキスをマッシュポテトに含ませることで、料理に奥行きが出る。ソースとして展開する方法も考えていきたい。こういう「余すところなく使う」発想は、料理の基本でもある。

昼食は、Wさんと

JAANPAAレストランの外観。チョンブリの緑の中に立つタイ料理の名店。

JAANPAAで出てきた料理。金色のボウルに盛られたタイの一品。

お昼は、Wさんという秘書の方と一緒にいただいた。

Wさんは優秀な方だ。話していてすぐわかる。聞けば、金融業に勤めた後、オーストラリアにワーキングホリデーで渡り、さまざまな経験を積んできたという。現在はバンコクで働いている。

もうすぐご結婚されるそうだ。

相手は台湾の方で、3Mに勤めていらっしゃる。ちょうど運良くバンコクへの転勤が決まり、二人でこの街に暮らすことになったという。人生というのは、こういう偶然が重なって動いていくものだ。おめでとうございます、と素直に思った。

仕事の話より、人の話が印象に残る昼食だった。

午後の実演。15人が集まった

午後2時から5時は、実演の時間だ。

今日のメニューは、塩釜、焼きしゃぶしゃぶ(すき焼き風のたれで)、ガーリックライス。いくつかの調理技術を、実際に手を動かしながら見せていく。

気がつけば、15人ほどが集まっていた。

「おいしい」「もう一口」「これはどうやって作るんですか」。そういう声がそこかしこから聞こえてくる。質問は少なかったが、それよりも「食べたい」という気持ちが素直に出ていた。若い。フレンドリーだ。好奇心がある。この3つが全部そろっている。

タイの若者の国民性というか、人柄の明るさを感じた。

近づいてくる。笑顔がある。緊張感より、関心のほうが勝っている。日本の若者とは少し違う空気だ。どちらが良い悪いではない。ただ、こういう素直さは、料理を学ぶ上で大きな武器になる。

勉強熱心な人もいる。

少し離れたところで、黙ってじっと見ている人がいた。質問はしないが、目が真剣だ。後でそっと近づいて話しかけると、「もう一度やり方を見せてほしい」と言ってきた。こういう人が、一番伸びる。

順番や動線など、日本式のサービスに近づけるための課題はある。でも、それは急がなくていい。土台が整っていれば、細部は少しずつ積み上げていける。今日はその土台の確かさを感じた。

今日の体の状態と、明日のこと

仕事が終わったのは夕方だった。疲れはある。

でも、充実している。朝の散歩から始まって、テイスティング、ランチ、実演。一日の中にいくつもの場面があり、それぞれに発見があった。こういう密度の濃い一日が続いている。

胃腸の調子は悪くない。

タイの食事が体に合っているのかもしれない。野菜が多く、香辛料が豊かで、発酵の旨みがある。ナンプラーベースの料理は、腸にとっても優しい気がする。出張中でも、体の調子が保たれているのは、食事のおかげもあるだろう。

明日の朝は、ジョギングをしてみようと思う。

今朝歩いた道を、今度は走る。路面の状態はわからないが、体が動く感覚はある。40代から続けてきた習慣を、熱帯の地でも続ける。それが今の自分のやり方だ。

アマタ・チョンブリの二日目が、終わった。


土台がある人は、どこでも伸びる。それはタイの若者を見て、改めて思ったこと。

※ この記事は個人の体験と公開情報に基づくものです。特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。健康上の不安がある方は、医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。