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ホタルホテル、最終日。鉄板焼レストランの鉄板と、打ち上げの夜。
09:00。今日がラストだ。
少し寂しい気もする。カーテンを開けると、バンコクの街が広がっていた。朝食を済ませてから、外を少し歩いてみることにした。
バンコクの朝を歩く
ホテルを出て、右へ曲がる。そのまままっすぐ進む。
蒸し暑い。雨季のバンコクは、空気がまとわりつくような湿度だ。アマタでも感じたが、ここバンコクはさらに濃い。排気と熱気が混ざり合って、独特の空気になっている。それでも外を歩きたかった。
500メートルほど進んだあたりで、ガソリンスタンドの前を通り過ぎた。
交通量が激しい。バイクが隙間を縫うように走り、車が絶え間なく流れていく。クラクションが鳴る。信号は存在するが、あまり関係なさそうな動きをしている車も見える。バンコクの朝は、こんなふうに動いている。
アマタとは全然違う。アマタは静かで広かった。ここは情報量が多い。人の密度、音の密度、においの密度。東京の朝に似ているが、さらに濃縮されている感覚だ。歩きながら、そういうことをぼんやりと考えていた。
10:30からのスケジュールを確認しながら、ホテルに戻った。
館内見学。日本を感じる空間

10:30から、ホタルホテルの館内を案内していただいた。
英語での説明だったが、丁寧に見せてくれた。施設の各セクションを一通り回る。まず感じたのは、広さだ。
日本のホテルと比べても、一つ一つのセクションにゆとりがある。廊下が広い。レストランとレストランの間の空間も、余裕がある。客室フロアは静かで、落ち着いている。セキュリティの仕組みもしっかりしていそうだった。
ロビー周りには、桜をモチーフにした装飾が随所にある。日本らしい、品のある雰囲気。タイの土地にいながら、日本のホテルに来た感覚がある。これがニッコーというブランドの力なのだと思った。
プールも改めて見た。南国の陽気の中、きれいに整備されたプールがある。気温は高い。プールサイドの椅子に座っている宿泊客がいた。こういう場所では、仕事を離れてゆっくり過ごしてみたい気持ちになる。今回は仕事だから難しいが、次があればそういう機会もあるかもしれない。
お土産に、チョコレートを
館内のコーヒーバーで、チョコレートを買った。
鉄板焼レストランのスタッフへ。そして帰ってから職場の皆さんへ。小さなチョコレートだが、気持ちが大事だと思っている。ただ、一つ心配がある。バンコクの気温で、荷物の中でバラバラにならないかということだ。丁寧に包んでスーツケースの奥に収めた。なんとかなるだろう、と自分に言い聞かせた。
午後のトレーニング。ビデオに残す
13:00から、午後のトレーニングが始まった。
GMからひとつリクエストがあった。「調理する手さばきをビデオに撮ってほしい」。それを受けて、今日は撮影しながら実演することにした。
鉄板の前に立つ。
サーモン、肉、チキン。それぞれを順番に焼いていく。火の入れ方、トングの使い方、焼き上げのタイミング。言葉では伝えきれない部分を、映像に残す。後で繰り返し見返すことができる。それがビデオの意味だ。
ただ、正直に思うことがある。
手本をビデオに撮ったとしても、スタッフがすぐに同じように動けるかというと、そう簡単ではない。技術というのは、繰り返し体を動かすことで染み込んでいくものだ。見るだけでは足りない。でも、今日の時間はその入り口になる。きっかけを作ることが大事だと思って、丁寧に実演した。
トレーニングが終わると、すぐ休憩に入った。
キッチンを歩いてみる
休憩の前に、キッチンをぐるりと見て回った。
鉄板焼レストランのキッチン。それから日本亭のデシャップ(仕上げ)キッチン。今夜の予約に向けて、スタッフたちがスタンバイの準備を進めていた。静かに、淡々と動いている。でも、その動きに緊張感がある。営業前のキッチンは、独特の空気を持っている。
日本亭ではブリーフィングも行われていた。シェフとスタッフが今夜のメニューと段取りを確認している。言葉はタイ語だが、その空気感は日本のホテルのそれと変わらない。プロの現場には、国を超えて共通するものがある。
部屋に戻って、考える
午後、部屋に戻った。
今日は特に何かを集中してやった、という感じではない。でも、それがよかった。館内を見て、トレーニングをして、キッチンを歩いた。盛りだくさんではないが、密度のある一日だ。ゆっくりと、満喫した感覚がある。
この6日間を通じて、自分なりに気づいたことがある。
鉄板焼レストランで毎日当たり前のようにやっていることが、こうして外に出てみると、いかに積み重ねの上にあるかがわかる。火の入れ方、包丁の角度、ゲストへの声のかけ方。日常の中で無意識になっていた部分を、言葉にして伝える作業は、自分自身の棚卸しでもあった。
指導する立場で来たわけだが、両拠点のスタッフの吸収する姿勢に、こちらが背筋を正される場面もあった。言語や文化の違いがある中でも、鉄板の前では伝わるものがある。そう確信した出張だった。
夜。鉄板焼レストランで最後の乾杯
17:30に、再び上へ上がった。
19:00から予約が入っているということで、その準備と最初のサービスを見学する。スタッフが静かに、でも確実に動いている。昨日より、少しだけ動きが整っている気がした。指導したことが、少しずつ形になっている。それだけで十分だ。
20:00を過ぎて、鉄板焼レストランで食事をした。

鉄板の前に座る。自分が指導した場所で、今度は食べる側として座る。不思議な感覚だ。料理が運ばれてくる。スタッフの動きを目で追いながら、何も言わずに食べた。言葉より、この時間が大事だと思った。

食事が終わった後、スタッフと一緒に飲みに行った。
大きなオープンエアの食堂。チャンビールとLEOビールが並んでいる。賑やかな夜の空気の中、タイ料理が次々と運ばれてきた。最後に、少しだけ言葉を伝えた。上から目線にならないように、でも正直に。これからも続けてほしいということを、自分なりの言葉で。
どこまで伝わったかはわからない。でも、笑顔があった。それで十分だと思った。
ホタルホテルバンコクでの仕事が、終わった。
6日間の出張が、終わった。
植えた種が根付くかどうかは、これからにかかっている。
※ この記事は個人の体験と公開情報に基づくものです。特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。健康上の不安がある方は、医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。