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山陽の旅、二日目の夜。日御碕灯台に沈む夕日と、出雲の温泉宿。


石見畳ヶ浦をあとにして、車で出雲へ向かった。

午後の道を、アクアで走る。海沿いの道は気持ちがいい。窓の外を、島根の景色が流れていく。今日の宿は、出雲の温泉宿だ。到着が、今から楽しみだった。

出雲の温泉宿「界 出雲」へ

夕方、宿に着いた。

星野リゾート「界 出雲」のエントランス。吹き抜けの開放的な空間。

星野リゾートの「界 出雲」。駐車場にアクアを停めて、フロントへ向かう。てくてくと歩きながら、まず思った。立派な宿だ。気温は20度を少し超えるくらい。過ごしやすい。

チェックインを済ませて、部屋へ通された。

界 出雲の和室。木の温もりと畳、大きな窓から海が見える。

木でできた、和の空間。本当に素晴らしい部屋だった。木の板と畳の、落ち着いた和室。シャワールームからも外の景色が見える。部屋からは、夕方の日の入りが眺められる。そして朝の日の出は、館内のラウンジから見られるという。朝も夕も、空の移ろいを楽しめる宿だ。なんと贅沢なことだろう。

部屋番号は315。館内も少し見て回った。2階と3階が宿泊の部屋になっている。階段を上り下りしながら、ロビーへ。どこを歩いても、和の趣が行き届いている。日本人でよかったな、と思える空間だった。

そして、館内にひとつ、楽しみな知らせがあった。

夜の19時から21時半まで、ここで石見神楽(いわみかぐら)が上演されるという。島根に伝わる、勇壮な神楽だ。これは見逃せない。

温泉で、旅の疲れをほどく

荷物を置いて、まず温泉に向かった。

旅の二日目。朝から石見畳ヶ浦を歩き、車を走らせてきた。体は心地よく疲れている。こういうときの温泉は、格別だ。

湯にゆっくり浸かる。

ここの湯は、ナトリウム-塩化物強塩温泉。塩分をたっぷり含んだ、よく温まる湯だ。とろりと肌になじみ、じんわりと、体の芯まで温まっていく。肩の力が抜けて、足の疲れがほどけていく。塩のベールに包まれるようで、湯から上がってもずっとぽかぽかが続く。温泉というのは、本当によくできている。日本人が何百年もかけて大切にしてきたものだ。その恵みを、こうしてありがたく受け取る。

発酵食品もそうだが、温泉もまた、土地と時間が育んだ「めぐみ」だ。すぐには手に入らない。長い積み重ねの上にある。だからこそ、ありがたい。

湯上がり、浴衣で灯台へ

湯上がりに浴衣を着て、宿の周りを少し歩いてみることにした。

夕方の風が、思いのほか強い。でも、湯上がりの体には、その風が心地よかった。浴衣の裾をなびかせながら、てくてくと歩いていく。

灯台へと続く、緑に包まれた小道。

しばらく行くと、海辺に白い灯台が見えてきた。

日御碕灯台。青空に向かってそびえる白亜の灯台を見上げる。

日御碕灯台(ひのみさきとうだい)だ。出雲の海に立つ、白亜の灯台。崖の上に、すっくと立っている。海を見下ろすように、まっすぐ空へ伸びている。その姿に、なんだか引き寄せられた。今日の散歩の行き先は、ここに決めた。

灯台の周りは、自然が豊かだった。松の木が、海から山のほうへ向かって、横に傾いている。長い年月、強い潮風を受け続けてきたのだろう。風の通り道が、木の形にそのまま刻まれている。自然がつくった、生きた造形だ。鳥の鳴き声が、あちこちから聞こえてくる。

日御碕灯台と、青く広がる海。

白い灯台と、青い海と、傾いた松。その取り合わせが、なんとも美しかった。海の灯台というのは、どうしてこんなに絵になるのだろう。何枚も何枚も、写真を撮った。

灯台から見た、日の入り

そして、夕日だ。

灯台のそばに立って、海のほうを眺める。夕日が、水平線へとゆっくり降りていく。

これが、素晴らしかった。

水平線に沈んでいく夕日。空と海がオレンジに染まる。

空が、赤く、橙に、そして紫へと、刻々と色を変えていく。海面が、その光を受けてきらきらと輝く。白い灯台が、夕日のシルエットの中に、くっきりと浮かび上がる。夏の雲が、夕焼けに染まって流れていく。

「日本って、やっぱり素晴らしいな」

思わず、声に出していた。こういう景色が、当たり前のように、この国にはある。言葉では、とても表しきれない。だから、夢中でシャッターを切った。あとで何度でも見返せるように。

真っ赤な太陽が、まさに海へ沈もうとする瞬間。

妻は部屋で少し休んでいた。私はひとり、灯台のそばで、この夕日を心に焼きつけた。たまには、こうしてひとりで自然と向き合う時間も悪くない。日が沈みきるまで、ずっとそこに立っていた。

石見神楽と、夕食の夜

部屋に戻り、妻と合流して、夜の時間を迎えた。

界 出雲の夕食。地のものを使った料理と、ビール。

夕食は19時半から。温泉宿の夕食は、旅のいちばんの楽しみのひとつだ。島根は、海の幸も山の幸も豊かな土地。地のものを使った料理に、地酒。日本酒もまた、米と麹が生み出す発酵の結晶だ。出雲の地で味わう一杯は、また格別だった。

そして、石見神楽。

石見神楽の衣装。きらびやかな刺繍がほどこされた装束と面。

太鼓と笛の音が、体の奥まで響いてくる。きらびやかな衣装、勇ましい舞。神話の世界が、目の前で繰り広げられる。出雲は、神話のふるさとだ。その土地で見る神楽は、ただの観光の出し物ではない。土地の記憶そのものだった。

旅先で、その土地の食を味わい、その土地の文化に触れる。これ以上の贅沢があるだろうか。

二日目の夜が、更けていく

温泉に浸かり、夕景を眺め、神楽を見て、地酒を味わった。

朝は浜田の海辺を歩き、夜は出雲の宿でくつろぐ。一日のなかに、こんなにも豊かな時間が詰まっている。旅というのは、つくづくありがたいものだ。

窓の外は、もう真っ暗だ。明日は、出雲をもっとゆっくり巡ってみたい。

二日目の夜が、静かに更けていく。体はぽかぽかと温かく、心は満ちていた。


温泉も、地酒も、神楽も。その土地が長い時間をかけて育てたものを、ありがたくいただく。

※ この記事は個人の体験と公開情報に基づくものです。特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。健康上の不安がある方は、医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。