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ヨーグルトやケフィアは、本当にお腹にいいのか。ヒト研究37件を整理したレビュー論文


「ヨーグルトはお腹にいい」——これは、多くの人が一度は聞いたことのある言葉だろう。

朝食にヨーグルトを添える。便通が気になるときに発酵乳を選ぶ。こうした習慣は、日本でもすっかり定着している。

では、その「お腹にいい」という感覚は、科学的にはどこまで裏づけられているのだろうか。ヨーグルトやケフィア、チーズといった「発酵乳製品」は、実際に消化管(お腹)の健康にどう関わっているのか。

その問いを、ヒトを対象にした研究をまとめて整理したレビュー論文がある。2025年にオンライン公開され、栄養学の専門誌 Nutrition Reviews 84巻6号(2026年6月、オックスフォード大学出版)に掲載された(Bui & Marco, Nutrition Reviews, Vol.84, Issue 6, 2026、DOI: 10.1093/nutrit/nuaf114)。著者は、発酵食品研究で知られる米カリフォルニア大学デービス校の研究チームだ。

今回は、この論文が整理した「発酵乳製品とお腹の健康」の全体像を紹介したい。

この記事について:本記事は研究内容を紹介するものであり、特定の食品の効果や治療効果を保証するものではありません。今回の論文は既存研究を整理したレビュー(ナラティブレビュー)であり、発酵乳製品を食べれば必ずお腹の不調が治ると証明したものではありません。お腹の症状が続く場合や、健康・病気に関する判断は、医療機関・専門家にご相談ください。

そもそも「発酵乳製品」とは

発酵乳製品とは、牛乳などの乳を、乳酸菌やその他の微生物の力で発酵させた食品のことだ。

身近なものでは、ヨーグルト、飲むヨーグルトなどの発酵乳、ケフィア(東欧などで飲まれてきた発酵乳飲料)、そしてチーズが含まれる。

これらの食品には、発酵の過程で増えた微生物や、微生物がつくり出したさまざまな成分が含まれている。それが、お腹の中の環境に何らかの働きかけをするのではないか——長く関心を持たれてきたテーマだ。

ヒト研究37件を一つひとつ検証

今回のレビューの特徴は、動物実験や試験管の実験ではなく、実際に人が発酵乳製品を食べた(飲んだ)37件の研究を集めて検証している点にある。

内訳は、ヨーグルトを扱った研究が12件、発酵乳が17件、ケフィアが3件、チーズが1件。それぞれが、発酵乳製品を摂ることで消化管の症状や、体内の「バイオマーカー」(体の状態を示す数値の目印)がどう変化したかを調べている。

研究の数を積み上げて全体像を描くこうしたアプローチは、一つの研究だけでは見えにくい傾向をつかむのに役立つ。

なぜ、発酵させるとお腹に働きかけるのか

そもそも、なぜ乳を発酵させたものが、お腹の健康に関わりうるのだろうか。研究で考えられているいくつかの道筋を、やさしく整理しておきたい。

一つは、生きた微生物(菌)の働きだ。ヨーグルトや発酵乳には、発酵に使われた乳酸菌などが生きたまま含まれるものがある。こうした菌が腸に届き、腸内にすむ細菌のバランスに一時的に働きかけると考えられている。

二つ目は、発酵の過程で生まれる成分だ。微生物が乳を発酵させると、乳酸をはじめ、体に働きかけるさまざまな物質がつくられる。乳のたんぱく質が分解されてできる小さな成分(生理活性ペプチド)が、体の調子に関わる可能性も指摘されている。

三つ目は、消化のしやすさだ。発酵の過程で乳糖(乳に含まれる糖)の一部が分解されるため、牛乳ではお腹がゴロゴロしやすい人でも、ヨーグルトなら比較的おだやかに感じることがある。

つまり、「菌そのもの」「菌がつくった成分」「消化のしやすさ」という複数の要素が重なって、お腹への働きかけにつながっているのではないか——そう考えられている。ただし、どの要素がどれだけ効いているのかは、まだ完全には解明されていない。

報告された変化:お腹の不快感と炎症の指標

論文が整理した結果として、いくつかの研究では次のような変化が報告されている。

まず、消化管の症状の面では、腹部の痛みや不快感、お腹の張り(鼓腸)、便秘、そして過敏性腸症候群(IBS)のつらさが和らいだという報告があった。IBSは、検査で異常が見つかりにくいのにお腹の不調が続く、悩みの多い状態だ。

次に、体内の指標の面では、TNFα(ティーエヌエフアルファ)という炎症に関わる物質の血中レベルが下がったという報告が特に目立った。TNFαは体の炎症の程度を映す目印の一つで、これが下がることは、体内の炎症が落ち着く方向の変化と考えられている。

そして重要なのは、このレビュー対象の研究では、発酵乳製品が腸の健康に悪影響を及ぼしたという報告はなかったという点だ。日常的に取り入れやすい食品として、大きな懸念は見当たらなかった。

ただし「効かなかった」研究もある

ここで、冷静に押さえておきたい点がある。

今回のレビューで検証された研究のうち、10件では、はっきりとした効果が確認されなかった。つまり、すべての研究で「お腹によい」という結果が出たわけではない。

これは矛盾ではなく、研究というものの現実だ。対象となった人の状態、食べた発酵乳製品の種類や量、期間、そして測り方が研究ごとに違う。だからこそ、結果にもばらつきが出る。

著者らも、発酵乳製品と消化管の健康の関係を確かなものとして結論づけるには、さらに質の高い研究が必要だとまとめている。

今回の論文は、あくまで「これまでの研究を集めて全体像を整理したもの」であり、「発酵乳製品を食べれば誰でもお腹の不調が治る」と証明したものではない。ここは、はっきりさせておきたい。

日々の食卓にどう生かすか

では、この研究を私たちの暮らしにどうつなげればいいのか。

一つの見方は、「発酵乳製品は、体質や商品選びに注意しながら、日常の食事に取り入れやすい選択肢の一つ」ということだ。効果に個人差はあるとしても、腸への悪影響の報告がなく、腹部の不快感がやわらいだという報告が複数ある食品を、注意点をふまえたうえで日常に取り入れる意味はあるだろう。

朝のヨーグルト、間食の発酵乳、料理に少しのチーズ。特別なことをしなくても、発酵乳製品は毎日の食卓に組み込みやすい。

ただし、注意したい点もある。加糖のヨーグルトや飲むヨーグルトには、砂糖が多く含まれるものがある。また、チーズは種類によって塩分や脂質が高い。「お腹にいいから」と量を増やしすぎれば、別の面で負担になりかねない。無糖を選ぶ、量をほどほどにする、といった工夫は大切にしたい。

もう一つ、日本に暮らす私たちには心強い点がある。発酵乳製品だけが「発酵の力」を持つわけではない、ということだ。味噌、納豆、漬物、麹——日本の食卓には、昔から発酵食品が根づいてきた。ヨーグルトのような乳の発酵食品と、味噌や納豆のような大豆や穀物の発酵食品は、由来も含まれる菌も異なる。だからこそ、洋の発酵と和の発酵を組み合わせることで、食卓の幅は自然と広がっていく。

今回のレビューが扱ったのは発酵乳製品だが、その背景にある「微生物の力を食に生かす」という発想は、和食の知恵とも深くつながっている。海の向こうの研究が、私たちの身近な食文化の価値を、あらためて照らし出してくれているようにも感じる。

大切なのは、一つの食品に頼りきることではなく、発酵食品を含めたバランスのよい食生活を、無理なく長く続けることだ。ヨーグルトもケフィアも、味噌も納豆も、その中の一つとして気楽に付き合っていけばいい。

Toshiより

今回の記事を読んで、ヨーグルトやケフィアのような発酵乳製品を、少し落ち着いて見直すきっかけになりました。

「ヨーグルトはお腹にいい」という言葉は、昔からよく聞きます。僕自身も、なんとなくお腹にやさしそうな食品というイメージを持っていました。でも今回のレビュー論文を見ると、発酵乳製品とお腹の健康の関係は、単純に「効く」「効かない」で分けられるものではなく、人によって、食品によって、研究の条件によって結果が変わるものなのだと感じました。

特に印象に残ったのは、ヒトを対象にした37件の研究を整理している点です。試験管の中だけの話でも、動物実験だけの話でもなく、実際に人がヨーグルトや発酵乳、ケフィア、チーズを食べたり飲んだりした研究を見ている。そこには現実の食生活に近い面白さがあります。

一方で、すべての研究で良い結果が出たわけではないという点も大切だと思いました。腹部の不快感やお腹の張り、便秘、IBSのつらさが和らいだという報告がある一方で、はっきりした変化が見られなかった研究もある。これは、発酵乳製品がだめだという意味ではなく、人の体がそれだけ複雑だということなのだと思います。

お腹の調子は、食べ物一つだけで決まるものではありません。睡眠、運動、ストレス、年齢、体質、普段の食事、薬の影響など、いろいろなものが関わっています。だから、ヨーグルトを食べたから必ずお腹が整う、ケフィアを飲めば不調が治る、という受け取り方はしないようにしたいです。

僕は発酵食品が好きですが、発酵食品を薬のように考えるのは違うと思っています。ヨーグルトも、味噌も、納豆も、漬物も、毎日の食卓を少し豊かにしてくれる食品です。体に良さそうだからと無理に食べるより、おいしく続けられる形で取り入れる方が、長く付き合える気がします。

今回の論文で面白いと思ったのは、「菌そのもの」だけでなく、「発酵の過程で生まれる成分」や「消化のしやすさ」も含めて考えているところです。ヨーグルトや発酵乳には、生きた菌が含まれるものもありますし、乳酸やペプチドのように発酵で生まれる成分もあります。また、牛乳ではお腹がゴロゴロしやすい人でも、ヨーグルトなら比較的食べやすいことがある。発酵乳製品の働きは、一つの理由だけでは説明できないのだと思いました。

ただし、注意点もあります。加糖のヨーグルトや飲むヨーグルトには、砂糖が多いものがあります。チーズは種類によって塩分や脂質が多いものもあります。乳製品が体に合わない人、乳アレルギーがある人、乳糖でお腹がゆるくなりやすい人もいます。だから、「お腹にいいらしいから」と量を増やすのではなく、自分の体に合うかを見ながら、ほどほどに楽しむことが大切だと思います。

僕にとっては、発酵乳製品だけでなく、和の発酵食品も同じように大切です。味噌汁を飲む。納豆を食べる。漬物を少し添える。そこにヨーグルトやチーズが加わる。和と洋の発酵食品を、無理なく食卓に取り入れていくことで、食事の幅が広がります。

そして、食事だけに頼らないことも大事だと思います。僕はジョギングも続けています。発酵食品を食べること、体を動かすこと、よく眠ること、食べすぎないこと。どれか一つで健康が決まるわけではなく、小さな習慣が重なって、今の体をつくっているのだと思います。

今回の記事を通して、ヨーグルトやケフィアを過大評価する必要も、逆に軽く見る必要もないと感じました。研究では良い方向の報告もある。けれど、まだ分からないこともある。だからこそ、期待しすぎず、でも日々の食事の一部として楽しむ。そのくらいの距離感がちょうどいいのだと思います。

発酵食品は、昔から人の暮らしの中にありました。そこに現代の研究が少しずつ光を当ててくれている。いつものヨーグルト一杯にも、微生物の働きと人間の知恵が重なっていると思うと、食卓が少し豊かに見えてきます。

これからも、発酵食品を「何かを治すもの」としてではなく、毎日の暮らしに寄り添ってくれる食べ物として大切に味わっていきたいです。


発酵乳製品と腸の健康の研究は、まだ「これから」の分野です。過度に期待せず、しかし気軽に。毎日の一杯のヨーグルトを、そんな気持ちで楽しみたいですね。

※ この記事は個人の体験と公開情報に基づくものです。特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。健康上の不安がある方は、医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。詳しくは免責事項をご覧ください。